くわがきあゆ【焼けた釘を刺す】狂気が交錯する、予測不能のどんでん返しミステリー

ミステリ

歪んだ「愛」

こんなお話(ネタバレなし)

物語は、主人公・千秋が帰省した矢先、後輩の萌香がストーカー被害に遭っていると知るところから始まります。ほどなくして、萌香は刺殺体となって発見され、千秋は深い衝撃と悲しみに包まれます。しかし、彼女はただ嘆くだけでなく、萌香の格好を真似て自ら犯人探しに乗り出すのです。千秋は萌香が通っていた大学やバイト先を訪ね歩き、怪しげな男たちに接触していきます。

その一方で、ブラック企業に勤める杏という女性も登場。彼女は上司のパワハラに苦しみつつ、優しい先輩への淡い恋心と、同僚との関係への嫉妬心に揺れ動きます。一見無関係に思える千秋と杏の人生が、物語が進むにつれて徐々に交錯し、読者の予想を裏切る展開へと突き進んでいきます。

日常の中に潜む狂気と、誰もが抱える心の闇が静かに、しかし確実に浮かび上がる――そんな緊張感が全編を貫く一冊です。

感想


この作品は、冒頭から張り詰めた空気が漂い、読み手を一気に物語の中へ引き込みます。千秋の行動はかなり歪んでいます。その狂気性が、物語の不穏さを増幅させています。

一方、杏のパートは現代社会の息苦しさや孤独をリアルに描き、読者の共感を誘います。二人の視点が交互に進むことで、謎が謎を呼び、ページをめくる手が止まりません。特に中盤以降、物語が一気に加速し、予想もつかない展開に驚かされるはずです

ここからネタバレ

ここから重大なネタバレのため、未読の方はご注意ください。

まずは、千秋が実は男性であり、物語中で女装だったことに衝撃。読者は千秋を女性だと自然に思い込むように描写が工夫されており、彼が萌香の服装を真似て行動する場面も「女性が女性の服を着る」ように誤認させられます。叙述トリック、、、あっぱれです。

表面上は「萌香の仇を討つ」という行為に見えますが、実際は「自分を傷つけられる存在(=本物の愛を与えてくれる者)を探す歪みまくった行動でした。
千秋の思う「本物の愛」には出会えず、最終的に「愛されるためには自らも愛さねばならない」という歪んだ結論に至り、自身が加害者となることで「真の愛の完成」を図ります。

そして、冒頭の新聞記事、ラストの新聞記事がつながる。
千秋と杏という二人の主役の物語が交錯し、最終的にひとつの事件として収束する構造になっています。

この構造は、タイトル「焼けた釘」が象徴する「常軌を逸した愛情表現」そのものであり、千秋の行動原理は「痛みの共有=愛の証明」という異常な等式によって成立しています。

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「焼けた釘を刺す」は、予想を裏切りまくられる展開と、読後に残る余韻がたまらない一冊です。終始、不穏な空気の中でですすむ物語です。ジメジメした感じが好きな方はぜひ手に取ってみてください!
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