ヒマラヤで発見された人骨が、現代の失踪事件と繋がる…その謎を解き明かす知的ミステリー！

こんなお話（ネタバレなし）

ヒマラヤ山中で発掘された200年前の人骨。そのDNA鑑定結果が、4年前に失踪した主人公・七瀬悠の妹と一致するという衝撃的な事実から物語は始まります。遺伝人類学を専攻する悠は、この謎を解明すべく動き出しますが、担当教授の殺害や研究室からの資料盗難など、次々と不可解な事件に巻き込まれていきます。

妹は本当に生きているのか？それともこの鑑定結果には何か裏があるのか？悠が辿り着いた真相は、想像を超える驚愕の事実でした。科学的テーマと人間ドラマが巧みに絡み合い、読者を最後まで引き込むスリリングな展開が魅力です。

感想

ヒマラヤで発掘された200年前の人骨のDNAが、主人公・悠の失踪した妹・唯と一致する衝撃的事実から始まる本作。遺伝学者の悠が真相を追う中、教授の殺害や研究室襲撃など不可解な事件が連鎖し、科学と人間ドラマが交錯するスリリングな展開が魅力です。伏線が巧みに散りばめられ、「なぜ？」「どうなる？」という疑問が最後まで脳裏を離れず、ページをめくる手が止まりません。

特に、主人公の悠が「科学的真実」と「妹への思い」の間で揺れる葛藤には強く共感。専門用語を排したわかりやすい科学描写と、家族の絆をテーマにした情感豊かなストーリーが絶妙に融合しています。読後には「強烈なテーマ」による深い問いが残り、エンタメ性と哲学的テーマの両方を堪能できる一冊だと思いました。

ここからネタバレ

ここから重大なネタバレのため、未読の方はご注意ください。

タイトルの「挿し木」は植物の繁殖技術を比喩的に用いたもので、作中では「クローン人間の生成」を意味していました。ヒマラヤで発掘された200年前の人骨が、主人公・悠の妹のDNAと一致した理由は、古代人をベースにしたクローンだったからです。よく考えれば分かるような気もしますが、そう考えるのも、この事実を知ったからこそ。この設定は、遺伝子操作による生命の複製というSF的なテーマを基盤とし、物語全体の核心になっています。

深い意味では、遺伝子操作という科学的テーマを軸にしながら、人間のアイデンティティや倫理観に迫る内容なのかと思います。

物語の面白さに加え、テーマも明確。楽しみながらも、読後に考えさせられる一冊です。
装丁のデザイン、単にかっこいいなぁと思いつつ見ていましたが、読後に改めて見ると納得のデザインですね。素晴らしい。